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2021.03.10】 【広報インタビュー】#6 生方信孝『空気づくりが自分の仕事』

11年目のベテランらしくハツラツとした振る舞いと、

泥臭くアグレッシブなプレーでチームを鼓舞するHEATのトライゲッター 生方選手。

チームと共に七転八起してきた最年長はどんな逆境でも負けないマインドを持っていました。

今までの経験を踏まえ、チームづくりで意識していることとは?

 

Q.まず今期はチームにとってどんなシーズンですか?

HEATは3年前くらいからメンバーの若返りが始まって、

若手をしっかり育てる、若手のやりやすい環境を作る、

というのがチームの方針になっていきました。

今シーズンは多くの外国出身選手がいなくなったことで、

若手がしっかり試合に出るチャンスが生まれています。

なので「若手が育っている」という成果を出すシーズンだと認識しています。

 

Q.生方さんが若手だった頃と今でどう違いますか?

努力はどの年代でも精一杯やってると思います。

僕が若い頃は先輩方が凄い人たちばかりで、

身体能力で言えば今の選手より全然高いんじゃないかな。

ただその中でみんながチームというより

個人や自分にフォーカスしていたのではないかなと思います。

今のチームはみんながチームにフォーカスして動けるから、

若手が伸び伸びプレーする環境作りも含めて、

全員で協力してできていると思います。

今と昔で違うところはそこかなと感じています。

 

Q.確かに当時は凄い人がいっぱいいましたね。

本当にいっぱいいました。今の選手たちより強くて速くて大きい。

ラグビーに必要な3拍子が揃っていました。

でもなかなか結果に繋がらなかったというところを見ると、

「ラグビーってチームスポーツなんだ」と感じますね。

いくら身体能力が高くて、個人が活躍してもそれが結果に繋がる訳じゃなくて、

チームにフォーカスを当てて全員が同じベクトルを向けるというのが大事なんだと

今まで学んできました。

 

Q.生方さんは遅咲きのイメージがありますが、中堅の時はどうでしたか?

4年目になってウィングにコンバートして、

ようやく自分の持ち味が発揮できるようになりました。

(そのコンバートがきっかけで)

得意なことで勝負していかないとダメだなと気付かされましたね。

 

Q.コンバートしたのは自分からですか?

いや…多分、3年目で既にクビの候補に入ってたんでしょうね。笑

その時のスタッフが僕の生きる道を模索してくれたんだと思います。

ハーフじゃ生き残れないからウィングはどうだ?って感じですね。

3年目の最後の試合(2012年12月16日マツダ戦)、スクラムハーフのリザーブだったのに

何故か途中からウィングで試合に出されました。

確かその時の相手に(当時マツダでプレーしていた)マノ

(レメキロマノラヴァ選手・現サニックス)がいて、

その試合でマノを振り切ってトライをしたんだったかな?

それで試合後に当時の上野監督が「ウィングどうだ?」と話をしてくれました。

その時は、「人に認めてもらいたい」「チームの役に立ちたい」

という気持ちがすごく強かったんです。

だから自分がそれで活躍できるなら。と喜んでコンバートしました。

 

Q.その時気持ちの変化はありましたか?

まず、(スクラムハーフなのに)パスが苦手だったんですよね。笑

でもパスを投げた量なら人一倍、誰よりも多く投げました。

朝早くからも投げたし、オフの日も投げたし。

それでもウィングに転向することになって気付いたのが、

思い切って仕掛けるプレーだったり運動量だったり、

1対1の強さだったりといった自分の長所を

やっと活かすことが出来るということでした。

ハーフではその部分はそこまで必要じゃなくて、

逆に見せすぎると良くなかった。テンポも下がるしゲームも崩れるし。

だからウィングになって初めて、自分の長所を生かせるポジションだと思いました。

中堅になってようやく試合に出させてもらえるようになって

自分がチームの役に立っているんだなと、初めて思えるようになりました。

なので3年目まではチームの一員という感覚はなかったのかも。笑

自分の中ではチームの役に立ててなかったから。

 

Q.そういう背景があって今の自分の役割ってどのように感じてますか?

一番は「空気づくり」ですね。

若手が伸び伸びプレーできるなと思ってもらえる雰囲気づくりです。

その部分は積極的にやってきているつもりです。

 

Q.「若手が伸び伸びする」具体的にどういうことを意識していますか?

やっぱり積極的に発言させるというのは大事。

他にはチャレンジに対して批判しないというのも意識しています。

練習中でのミスに威圧的な言動は絶対しません。

 

Q.若手も育ってきていますが、まだまだ最前線でチームを引っ張っている印象があります。

HEATは若手中心のチームなので浮き沈みが激しいんです。

なので乗ってる時は僕の声でもっと盛り上がって欲しいし、

沈んでいる時はチームのスタンダードに戻ってきて欲しい。

一番声を出して、チームを鼓舞し続けることは常に考えてます。

それこそさっきも言っていた「空気づくり」なんですけど、

良い雰囲気で試合もしたいし、勝ちたいし。

できたら自分の声にみんなからそれ以上の返事を返して欲しいんですけどね。笑

 

Q.鼓舞し続ける原動力ってなんですか?

やっぱりHEATが好きだから。HEATを強くしたい、HEATで勝ちたい。

それが一番大きくて、ここ数年チーム全体で意識している

「チームの価値」を上げるっていうところにも繋がっていきます。

お客さんは僕たちを応援しにきてくれます。

その応援に対してチームがどんどん盛り上がっていく姿や

熱い姿を見せることで返していきたい。

そのためにもみんなには80分間下を向かず、戦い続けて欲しいと思っています。

 

Q.リーダー陣から今シーズンのキーマンだと期待されていることに対してどう感じていますか?

 (#1 リーヘッドコーチ ・ #3 伊藤選手 インタビューより)

僕も寛ちゃん(尾又寛汰)も他のチームにいるウィングに比べるとスピードもサイズも全然敵いません。

でもワークレート(仕事量)の部分、誰かが突破した時に一番最初にサポートできるということに関しては

僕らの強みだと思っていて、そこを評価してくれるのは嬉しいです。

 

Q.この前のトヨタ戦でもチーム内でのワークレートの数値で総ナメでしたね。

寝たらすぐ起きるというのは身についてますね。

特に意識しているというより、倒れたら正しいポジションに戻るっていうのは

自然にできるようになっています。

 

Q.身体能力のピークっていつだったと思いますか?

30歳手前の時が身体能力的には一番良かったんじゃないかな…

試合に出始めるのが遅かったというのもありますが。

その時から経験が培われて、プレーの予測であったり、

身体の使い方も上手になったし、身体の強さも活かせるようになりました。

確かにピーク時よりは体力は落ちているけど、

ラグビー選手としての質はそんなに落ちてるとは感じてません。

 

Q.むしろ今がピークくらいですか?

それはない。笑

やっぱり身体能力は高い方が良いです。笑

でもそれを補う経験とか、今の自分にしかできないこともあって…

でもやっぱり身体能力は高い方が良いかな。笑

 

Q.2017年、下部リーグに落ちたタイミングがチームのターニングポイントだったと思いますが、

 その年のバイスキャプテンを引き受けた経緯と気持ちは?

本当にチームが変わらないといけない状況でした。

その年にダニー(ダニー・リーヘッドコーチ)がきて、コバがキャプテンになって。

本当にやりがいがあると感じたし、自分が成長できるチャンスだと思ったから引き受けました。

実際こうやってチーム作りに関わっていく中で、人としてもラグビー選手としても、

自分自身すごく成長したなと感じました。

 

Q.私から見ても、その時に別人になったような印象があります。

確かにその時に変わったと思います。

それまでは僕も個人にフォーカスしていたんだと思います。

自分が活躍すればチームのためになると思っていました。

でも2017年からは(チームにフォーカスするという点で)チームマンになったと思います。

自分の言いたいことを言うだけではなく、

チームのために言葉を選ぶことで他の選手への響き方も変わります。

バイスキャプテンになってから言葉選びも気をつけるようになりました。

 

Q.その時の経験が今に響いているような気がします。

それは間違いないです。

やってよかったと本気で思っています。

 

Q.今はチームが勝てていなくて苦しい状況ですが…まぁでも今までもっと苦しい経験してますよね。笑

ですね。「今シーズンよかったな」と感じるシーズンを過ごせたのなんてここ数年だけ。笑

それまで7、8年はずっと苦い思い出でした。

今シーズンも3試合勝てていない状況ですが、(今までに比べると)苦しいなんて全く思いません。

ただ、ここで必要になるのがチーム力だと思っています。

今まで味わった本当に苦しい経験をしている海斗(森川海斗)や健太(山路健太)、

コバとかがどうやってチームをポジティブな雰囲気に変えれるか。

そこはチームが成長していると実感できるポイントじゃないかなと思います。

そうやっていく中で残りの試合に勝ったりすれば…

いや、今のチームなら勝てると思う!

スポーツ選手だから勝利には拘りたいし、

若手選手が多くても、日本人選手・社員選手が多くても、

世界のトップ選手が多く出ているチームが相手でも、

勝ちを掴んで自信をつけていきたいと思います。

 

取材日:2021年3月9日

(取材・文:中田裕人広報)

 

▼前回のインタビュー記事はコチラ

#5 具 智元 『年長者の自覚』